イラスト・漫画のアナログ制作からデジタルへ移行する際の、ペンタブノウハウ

2016年11月10日ペンタブレット(板タブ)

ワコム ペンタブレット intuos Pro Lサイズ PTH-851/K1

多くのプロアーティストが、原稿製作の工程をデジタルへと移行するなかで、そろそろペンタブを購入してみようかとお考えの方も少なくないのではないでしょうか。

使い慣れた画材からは離れがたく、デジタル移行するにも予備知識や心構えがないとなかなか踏み切れないものです。

そこで、ペンタブの紹介などを通じて、アーティストのみなさんが前向きにデジタル移行を検討できるような情報をお伝えしたいと思います。

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初心者の「描きづらさ」の原因

描画の違和感―intuos Proの提案

アナログでの描画経験者が最初につまづくのが、「思ったように線が描けない」というトラブル。

ペンタブレットの大前提として理解しておくべきなのは、

・使用するペンタブレットの描画領域=使用するモニタのサイズ

であること。

モニタとペンタブレットのサイズ差は、描画の際の筆圧や線の長さの違和感と比例します。

つまり、よりアナログに近い書き心地を求めるなら、なるべく「モニタのサイズとペンタブのサイズ」を近づけることをおすすめします。

例として、ワコム製品のintuos Pro Lサイズ(Amazonで販売されている型番:PTH-851/K1)の描画領域は、27インチのモニタとほぼ同じです。

ペンタブと一緒にモニタごと買い替えてしまうという手もありますが、なるべくなら描画領域の大きい製品を選んだほうが無難と言えるでしょう。

描き心地について

紙にイラストを描くときは、ペン先の引っかかり・紙自体の強度などによって描画する線をコントロールすることができます。

残念ながら、ペンタブレットというものの性質上

・独特の「ひっかかり」がない
・描画時のペンと紙のたわみがないため、描いているという実感がない

という違和感を最初に覚えることでしょう。

よく提案されているのは、描画領域にトレーシングペーパー等の薄い「紙」を引いてみる事です。

ペン自体も代表的なメーカーであるワコムから何種類か販売されていますが、アナログで描画するとき同様に「持ちやすい・握りやすい」ペンを選んでみるのもひとつの手でしょう。

グリップ部分を工夫することでペンのたわみを感じることもできるので、ゴム等を巻いてみるなどのカスタマイズも有効と言えます。

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初心者から上級者まで、おすすめのペンタブ製品

ワコム製Intuos・Cintiqの紹介

ワコム Intuos Cintiq Intuos Proオプションペン 標準ペン KP-501E-01X

・Intuos Drawシリーズ

ペンタブ初心者~中級者向けのエントリーモデルです。

ペイントソフトのシリアルコードが付属しており、購入後すぐに使うことができます。

廉価版とはいえ、本体にはショートカットキーも付属しており、デジタル描画特有の効率的な作業も十分に可能。

描画をしないときはマウスがわりに使うこともできるので、お得感があるシリーズと言えます。

・intuos Proシリーズ

Drawシリーズよりもより描画精度・品質にこだわった、上質なラインナップです。

サイズ展開も3種類となっており、描画領域の広さにこだわるならこちらのシリーズがよいでしょう。

ショートカットキーはDrawシリーズよりも多く、アンドゥ・リドゥなどの操作に限らずありとあらゆるデジタルのメリットを堪能しつくすことができます。

ただし、ペイントソフトのシリアルコードは付属されていないため、別途ご自身でソフトを用意する必要があります。

・Cintiqシリーズ

予算に余裕がある・継続的にデジタル描画をしたい・アナログの描き心地をなるべく損ないたくないという人には、液晶タブレットをおすすめします。

ワコムではOS搭載モデル・非搭載モデルの2種類を展開しておりますが、PCをすでにお持ちでデスク周りに余裕のある方であれば、非搭載モデルで十分でしょう。

画面保護フィルムなどのアクセサリーも充実しているため、長く大切に使うことも可能です。

筆圧レベルが重要!

ペンタブレットの値段と性能を決めているのは、筆圧レベルであるといっても過言ではないでしょう。

一般的に、

・筆圧レベル512…筆記用(描画には適さない)
・筆圧レベル1024…ここから上が描画用
・筆圧レベル2048…描画に最適

と言われています。

外部デバイスとしてのタブレットではなく、ペン付きのタブレットPCなどもイラストレーターに注目されています。

筆圧レベルがクリアできるのであれば、これらの製品も検討にしてみてもよいでしょう。

使用前の準備

デバイス側での設定と調整

外部デバイスを接続する前に、必ずドライバのインストールから行いましょう。

特にWindowsの場合は、ドライバインストールの前に焦って本体を接続してしまうと、PCが自動的にインストールしたドライバとペンタブ付属のドライバが競合してしまい、トラブルが起きがちです。

ペンタブの表面は、そのまま使うと磨耗が避けられないため、フィルムを張る・薄い紙を敷くなどをして、保護してあげましょう。

パソコン側での設定

ペンタブのドライバまたは使用するペイントソフトごとに、筆圧の設定が必要となります。

これが描き心地を大きく左右する・ペンタブの性能を上限まで引き出すのに必須と言っても過言ではないので、最初に必ず済ませておきましょう。

あると便利な外部ツール

まずはファンクションキーを使いこなす

デジタル描画の際のショートカットのひとつ、「アンドゥ・リドゥ」は直感的に行えるように準備しておきましょう。

ペンタブレットのドライバ設定から、お使いの製品についているファンクションキーの割り当てができるので、ここに上記の操作やペイントソフトごとのショートカットキーを設定しておくと便利です。

トラックボールマウスのすすめ

ペンタブレットを使い始めると、どうしてもデスク上が手狭になります。

ドローイング用の資料などを置くと、ますます作業しづらくなるというもの。

そこで、様々な分野のアーティストが愛用する「トラックボールマウス」をおすすめします。

利点としては、

・マウスパッドが不要
・多くの製品にはファンクションキーがついており、ペンタブ本体と合わせて作業能率向上に役立つ

ことです。

1万円以下の安価なモデルからプロアーティスト向けの海外製品まで様々ありますが、安いものでも普段使いから便利さを実感できるため、購入を検討してもよいでしょう。

アナログ工程と併用する場合~漫画編

プロの漫画家のなかでもデジタル作画へと移行するかたが多くいるなかで、アナログの利点・デジタルの利点をそれぞれ理解して併用する方も少なくありません。

白黒原稿におけるデジタル作画の最大の利点としては、

・ベタのムラがない
・消耗品であるトーンを節約できる
・トーンワークの際に机上が散らかったりしない、削り等の処理を均一に失敗なくできる

これらが挙げられます。

これを踏まえた上で仕上げのみをデジタルに移行する場合は、作業しやすく・かつ良画質でアナログ原稿をデジタルに読み込むことが大前提と言えるでしょう。

コミック作成機能もあるペイントソフトだと、原稿読み込みの際の最適な設定をすることができます。

スキャナー側で設定することもできますが、機種によって精度にばらつきがあるため、ペイントソフトの読み込み機能を活用するのが良策です。

アナログ工程と併用する場合~カラーイラスト編

カラーイラストの場合、

・線画をアナログで、ペイントをデジタルで行うか
・アナログで仕上げたイラストを、ペイントソフトで色調調整するか

画風によってこのようにやり方が分岐します。

線画のみをアナログで仕上げる場合は、ペンタブと触れている時間が長い分その性質などをより理解しやすいため、いずれはすべての工程をデジタルに移行するということも十分に可能です。

色調補正や効果付けのみをデジタルで行う場合は、スキャナーの性能やペイントソフト側での読み込み時の設定が肝心要と言えるでしょう。

出来るだけ最高の画質で読み込み、PCの処理性能や出力時に必要なクオリティによって徐々に品質を最適化していく…という緻密な作業が必要になります。

全ての工程をデジタルに移行する前の心得

白黒原稿の場合はそれほどでもありませんが、直感的にペンタブを取り扱えない状態で全行程をデジタルに移行した場合、独特の「デジタルっぽさ」が気になるときがあります。

俗に言う「アニメ塗り」であれば問題ありませんが、水彩風・油絵風・アクリルやガッシュ画材風などを出すには、一工夫が必要です。

・ペイントソフトごとに配布されているブラシやペンをダウンロード/活用する
・画風の近い作家のメイキングビデオを参照してみる

等々、学んでみるのもよいでしょう。

ペンタブのメンテナンス方法

ペン先のチェック

ペン先はアナログの物同様、消耗品です。

磨耗により書き味が変わったり、筆圧コントロールに影響したりします。

ペンタブレットのメーカーは、交換用のペン先部品を別売りで提供しているので、予備で購入しておきましょう。

タブレットは消耗品?

特に廉価モデルについて言えることですが、タブレットの表面も劣化・磨耗することがあります。

デジタルでの作画に慣れてきたら、上位モデルへの買い替え・液晶タブレットへの移行を検討してみてもよいでしょう。

よくある失敗の例

データ作成途中の保存形式

デジタルでの作画の際、レイヤーを使わないという人はほとんどいないと思います。

ありがちな失敗が「保存形式を間違えて、レイヤー情報が失われてしまう」ことです。

ペイントソフトごとに独自の拡張子がありますので、これに従って保存すれば間違いありません。

レイヤー情報が保存されている形式のファイル・出力用のファイルとで分けて保存するのが便利です。

保存の際の画質

イラスト投稿サイトなどは、投稿サイズに上限を設けているため、安易に画質を下げたり・サイズ変更をしたりして保存しがちです。

あとから差分修正をする可能性も踏まえて、いつでも描画再開できる状態での保存を一旦した上で、投稿用のファイルを作るとよいでしょう。

まとめ

ペンタブレットの基本的な知識の紹介から、実際にデジタル制作を行う際のポイント・注意点までをご紹介させていただきました。

様々なアーティストが自身のメイキング・コツ等を紹介しているため、ここでご案内した基礎知識に加えて、より具体的な製作工程をご覧になってみてもよいでしょう。

これからペンタブを購入する方・デジタル制作に興味をお持ちの方が、よりよいアーティスト活動を送れるようお祈りしております。






2016年11月10日ペンタブレット(板タブ)