ペンタブレット&パソコンで漫画を描く!方法あれこれ
近年は、熟練のプロ漫画家も次々にデジタル作画へと移行しています。
まずペンタブレットが必要であることはイメージできていても、パソコンで漫画を描くにあたって他に何が必要なのか・どんな工夫が必要なのか…なかなか想像できない人も、多いのではないでしょうか。
筆者も検討の末にツールを取り揃えましたが、その経験を踏まえて、ペンタブレットにとどまらないデジタル漫画に必要なもの・作画の段取りや工夫についてご紹介したいと思います。
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デジタルで漫画を描く方法
デジタルで漫画を描くメリットは、多数あります。
- トーンやベタなどの処理が、簡単かつキレイにできる
- ほとんどの専用ソフトにパース定規や背景描画支援ツールがあり、簡単に描ける
- より繊細な絵を素早く描くことができる
このように、枚挙に暇がありません。
アナログ作画のまま商業誌などで活動を始めた場合、アシスタントに作画の助力を求める必要がどうしても出てきましたが、こうしたデジタルツールの発展により「商業作家が一人で」全ての仕事を完結できるようになってきました。
とはいえ、基礎的な画力がある人でも、デジタルツールの利用には慣れが必要です。
方法の説明に入る前に、デジタルで漫画を描くために必要なツールを挙げてみましょう。
- グラフィックソフト(出来れば漫画に特化したもの)
- ペンタブレット
- 上記2つの動作環境を満たすPC
資料を扱うのであればデュアルディスプレイの環境を検討すべきですし、PCが用意できない場合は、OSを搭載しているタイプの液晶ペンタブレット購入などが考えられます。
これら最低限のものを考えたところで、実際に商業誌で活躍している作家がとっている代表的な作画方法を紹介してみましょう。
- 線画までをアナログ、トーンやベタ処理に限ってデジタルで行う
- ネーム~下書きまではアナログ/ペン入れ以降の工程をデジタルで行う
- ネームからの前工程をデジタルで行う
他の方法としては、最後に紹介しますが、写真加工ソフトを使って線画と処理部分を合成加工する…というのも存在します。
アナログの工程が混じれば、スキャンに関する知識やツールも必要になってきます。
その点、全工程のデジタル移行は、慣れるまでは時間がかかるものの扱いさえ覚えてしまえば非常に楽というメリットがあります。
しかし、プロ歴の長い作家ほど、アナログ工程にこだわる傾向があるということも付記しておきます。
デジタル作画の場合、ペンタブレットの性能が高すぎるゆえに線の微妙な揺らぎ・強弱までを再現できないという難点もあります。
これについては、紙ベースの作画歴が長いほど違和感を覚える傾向があるようです。
いずれの方法をとるかは、絵柄・作家の好み等が強く影響するため、最初は最低限のツール+安めのスキャナーを用意してから始めるのもよいでしょう。
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使えるソフト
さて、ここからは、漫画制作の現場で広く使われている人気のグラフィックソフトを紹介します。
CLIP STUDIO PAINT
通称「クリスタ」と呼ばれる、イラストレーターにも人気のツール。
カラー・白黒両方の原稿に強く、ウェブ上で出回っているデジタルテクニックの多くがこのソフト準拠です。
サイトにアクセスしてみると、Pro/EXのいずれかで迷ってしまいますが、会員登録すれば30日間全機能を試用できるというサービスがあるので、両方試してみるとよいでしょう。
メリットとしては、
- ユーザーが配布しているトーン/作画支援素材が多数ある
- パース定規の機能が非常に高く、背景作画が簡単
- 同人誌や商業誌の入稿フォーマットに対応しており、面倒な保存形式変更などの必要なし
- ワコムなどの代表的なペンタブレットとの互換性がよく、トラブルが起きにくい
こういったところにあります。
パッケージで購入するとそれなりのお値段がしますが、DL版であれば月額500円~20回前後の支払いで永久ライセンス提供という、実質の分割払いとも言える購入方法が存在します。
迷ったらコレ!
と言えるソフトでしょう。
MediBang Paint
会員登録することで、無料で使える漫画制作ソフト。
クリスタに匹敵する性能を誇ります。
何よりも特徴的なのが、ソフト自体がタブレット・PC両方に対応/クラウドに作品を保存して共有できることです。
これにより、外出先での作画・チームでの制作も可能となっています。
近年はiPad ProやSurfaceなどのペン/タッチ機能の高いタブレット端末に注目が集まっており、PCとは別に左記のような端末をお持ちのかたは、まずはタブレット側でアプリをダウンロードして試してみるのも一手でしょう。
こちらも愛用者が多いためユーザー配布の素材が豊富・パース定規も充実しています。
注意点としては、対応している保存形式がクリスタよりも少なく、入稿先によっては保存形式を変更しないと受け付けてくれないということもあります。
しかし、無料ソフトとしては極めて性能が高いものであることは間違いありません。
少しでも節約したいかたにおすすめです。
アナログ原稿スキャン時のテクニック
どこまでアナログで進めるか
アナログ原稿をスキャンしてデジタルで工程を進める場合、どこまでを紙ベースでやるか?
が問題になってきます。
基本的には、
- 印刷時にムラが出やすいベタ
- アナログベースだと消費物となり、コストがかかりがちなトーン
これらの仕上げに関しては、デジタルでの処理をおすすめします。
線画はアナログのほうが思い通りにかける・ペンタブレットにどうしても慣れることができない…などといった方は少なくないようなので、デジタル作画に慣れないうちは紙ベースでもよいでしょう。
では、漫画を素早く・美しく仕上げるために、どんな工夫をすればいいのか?
アナログ工程を交えることを前提に、スキャンのテクニックを考えたいと思います。
スキャン方法
家庭用スキャナーのサイズの限界からお話しすると、A4対応のものまでは広く普及しています。
しかし商業誌向けの原稿…つまりB4サイズを読み込むとなると、A3対応の機種を探す必要が出てきます。
筆者も随分と探し回りましたが、A3以上対応の機種は5万円以上といずれも高価で、気軽に購入するには少し敷居が高いと感じました。
同人誌などであればA4原稿などで十分ですが、ここでは家庭用・コンビニなどにある業務用両方のスキャナーにおいて共通する注意事項やテクニックをお話しします。
まずは読み込み時の注意について。
アナログ作画の場合、ミントブルーのペンを台詞指定やパース描画などに愛用されています。
これについてですが、性能の高いスキャナーの場合、白黒で読み込んでも映り込んでしまうことも。
出来れば消しゴムをしっかりと掛けるか、練り消しなどで線を薄くしておいたほうがいいでしょう。
消しゴムについてですが、消しカスがゴミとしてスキャンデータに残る場合も考えられますので、羽ボウキなどを使ってしっかりとはたいておくのがおすすめです。
次に、読み込み時の解像度について。
結論から言えば、白黒原稿の場合は400bpi~600bpiの間が最適とされています。
大手コンビニのスキャナーだと、セブンイレブンの取り扱い機種がこういった細かい設定に対応しているため、お近くにあるかたは是非利用してみてください。
Photoshopのテクニック
最後に、プロも使っている作画方法…線画・仕上げ部分をPhotoshopで合成するテクニックを紹介します。
ここではトレース台をお持ちであることが前提なので、お試しになりたいかたはご用意ください。
薄墨をトーンにする
オフセット入稿であれば薄墨の印刷も可能ですが、商業誌のほとんどが対応していません。
大手編集者への持ち込みの際も、薄墨をもってトーンとしている場合は、手抜きとみなされる場合があります。
そんな時は、
- 線画原稿と同サイズの別紙を用意する
- トレース台の上で、トーンを張りたい部分に薄墨を塗っていく
- 線画と薄墨両方をスキャン、薄墨原稿をPhotoshopの設定でトーン化して合成する
こういった方法を使うとよいでしょう。
実際にこの方法を用いている作家として有名なのが、高橋ツトム先生です。
作画方法について言及しているインタビュー記事があるので、参照してみるとよいでしょう。
漫画表現に邪魔な部分を別紙に書く
かなり熟練した作家でないと、漫画表現をイメージ通りに再現するのは難しいと言われています。
ベタが多いシーンなどでは、強調したいキャラクターの表情や動きなどが隠れてしまい、ごちゃごちゃとした表現になることも。
そんなときは、
- 描きたい部分をまず原稿に起こす
- 流血の表現などの絵の印象を弱めてしまう部分を別紙に起こす
- スキャンしてペンタブレットを使い両方を調整、最終的に合成をする
という方法が考えられるでしょう。
この方法は非常に多くのプロ作家が取り入れているようなので、気になる漫画家のツイッターなどをフォローして確かめてみるとよいでしょう。
まとめ
はじめてパソコンで漫画を描く場合、ペンタブレットそのものの性能はあまり気にする必要がありません。
どの段取りで・どういった作画手順をとるのか…予算から何に対して、どのくらいの初期投資をするか。
これらのイメージ固めが最重要と言えます。
既にペンタブレットを購入しているものの漫画制作に躊躇されているかたも、これから漫画をどんどん描いていくための準備をするというかたも、是非ご参考にしていただければと存じます。