声優の専門学校、青二塾ってどんなところ? どんな人に向いている?
現在多くの若者に人気のある職業「声優」。
アニメの普及と声優が前面に出るようになったことにより、声優を志望する人も昔に比べると随分増えました。
素人の一般人が声優になる方法は、専門学校を卒業してプロダクションに所属するのが一般的です。
しかしこの専門学校と言うのが今やあちこちに溢れており、一体どこの学校が良いのか悩んでいる方も多いでしょう。
自分の憧れる声優が卒業した学校にするのも良いと思いますが、そもそも自分の性質と学校の性質が合っていないとせっかくの才能が開花しない可能性があります。
ですので、専門学校選びは情報を収集し、慎重に選ぶ必要があります。
少しでも情報収集中の方のお役に立てるよう、今回は、声優プロダクション大手の青二プロダクション直属の、青二塾についてご紹介したいと思います。
青二塾とは
青二塾は、声優大手事務所の青二プロダクション直属の俳優養成所です。
「俳優」養成所と言っても、将来は青二プロダクション所属の声優になるのが目的ですが、「優れた声優は優れた俳優でもある」をモットーに、演技の基礎から学ぶことができます。
希望すれば誰でも入れるのではなく、入塾するためにオーディションがあります。
しかし周りも素人ばかりですので、とにかく自信を持って笑顔で元気いっぱい、真剣に臨めば合格する可能性は十分にあります。
青二塾には東京と大阪に2校がありますが、生徒の立場ではお互いの交流はほとんどなく、それぞれが独立しているようなイメージです。
どちらも同じ青二塾ですが、学校によって違う点もあります。
東京校
レッスンは、1日4時間を週5日、これを1年間続けて卒業です。
1年と言う短期間で卒業となるので、早く結果を出したい方におすすめです。
ただし、週5日拘束されますので、青二塾東京校に通っている間は大学に通ったりフルタイムの定職に就いたりするのは難しいでしょう。
パートやアルバイトをしながらの生活となります。
大阪校
一方大阪校は、土曜日と日曜日のみ授業が行われます。
1組クラスと2組クラスがあり、大まかに学生と社会人でクラス分けが行われますが、自分の生活スタイルによって希望は聞いてもらうことができます。
ですので、どちらのクラスにも学生と社会人が混在しています。
土曜日は1組は昼に授業が行われ、2組は夜から授業です。
どちらも時間は2時間半となります。
日曜日はどちらのクラスも朝の10時から夕方6時半まで、昼休憩を挟みつつ幾つかのカリキュラムを受講します。
東京校とは違って土日に限定されているので、高校・大学や会社に勤めながらでも通うことができます。
また、大阪校は関西圏を中心に地方出身者が多いため、アクセントを正す授業にも力を入れています。
2年間と長い期間通うため、クラスの仲間でありライバル同士の絆が深まりますが、お友達ごっこの馴れ合いに発展しかけないというリスクもあります。
また、2年あるために1年生と2年生が存在します。
学校とは違うので、うんと年下の先輩や年上の後輩などが存在しますが、礼儀を重んじる校風なので何歳であれ先輩には礼儀正しく、後輩には思いやりを持って接するのが基本となります。
校風
非常にお堅い雰囲気です。
堅苦しい雰囲気が合わない方にはあまりおすすめできません。
誤解を恐れずに言うと生徒は「軍隊」のような訓練生となります。
常に笑顔で、先生や先輩には礼儀正しく、塾の外でも品行方正に、時間厳守、一般常識は備えておく…等々、役者である前に1人前の人間であれという考え方です。
ただ、この雰囲気に飲まれて「自分」を見失う生徒が多発します。
「真面目、真面目、とにかく真面目」の操り人形と化してしまうような状態です。
ここで自分を見失わなかった人がプロへの第一歩を踏み出せるように感じます。
授業の内容
先に述べた通り、声優よりも俳優としての演技力を磨くことに力を入れています。
よく声優の専門学校でイメージされる、アフレコ体験のようなものはほとんどありません。
下記は大阪校の場合ですが、ざっくりとどのような授業があるのかご紹介します。
全て1人の先生が教えるのではなく、複数の先生が担当しています。
年に数回、青二プロダクション所属の現役の声優が先生として授業に来ることもあります。
演技の勉強
俳優が持つべき演技についての考え方をテキストを元に一から学びます。
そしてテキストや、塾側が用意した台本に沿って全身を使って演技の訓練をします。
内容はごく日常的なものであり、人間が何を考えてどのように動くのかなどを自分の体験を元にしたり、想像したりしていきます。
ですので、アニメ的な内容で声優の訓練をしたい方には全く不向きと言えます。
先生は最初からあれこれ教えません。
生徒同士でアドバイスし合ったり、自分で考えたものをまずは披露して、そこに先生が指導を入れていく形となります。
生徒同士でグループを組んで1つの演技を行うことが多いので、クラスメイトは越えるべきライバルでもあるのですが、まずは相手の良さを引き出すなど、協力することが大切となります。
発声・アクセントの訓練
腹式呼吸で正しい発声を身につけるために、徹底的に発声訓練を行います。
また、俳優は標準語での演技が多いため、正しい標準語のアクセントやその法則もしっかりと学びます。
地方出身者の苦手な鼻濁音、母音の無声化なども完璧にできるように法則を学び、特訓します。
ダンス、音楽
ダンスや歌も俳優の表現に必要なものです。
これらの授業にはあまり多くの時間は割かれませんが、生徒は楽しみながら自己表現を学びます。
イベント
夏の合宿や、冬のクリスマス会などがあります。
どちらも青二プロダクションの重役の方々も参加するので生徒にとっては自分をアピールする貴重な機会となります。
特に合宿では、一人一人自己PRの時間があったり、グループを組んでオリジナルの演劇やミュージカルを披露する機会があり、生徒はこの合宿に向けて授業の時間外にも仲間同士で必死に練習を積み重ねることとなります。
青二プロダクション所属までの道のり
大阪校の場合、2年生が2段階のオーディションを受けます。
ビデオ撮影
毎年12月にオーディション用のビデオ撮影をします。
本物のスタジオにて、自己PRや指定の短い台本、自分のオリジナルの台本などを演じて撮影します。
その際服は手持ちのもので、生徒が自分で用意します。
この時点で落とされるということはありません。
あくまで、オーディションの資料となります。
対面オーディション
卒業の少し前に、青二プロダクションの重役の方々を前にオーディションがあります。
自己PRや演技、面接などです。
一人一人オーディション会場となる教室に呼ばれます。
生徒にとっては塾の集大成となり、ピリピリと緊張感漂う1日となります。
卒業生のその後
卒業式から数日後、オーディションの結果が郵送で届きます。
合格すれば青二プロダクションのジュニア所属、不合格であればそこで終わりです。
青二塾が良心的なのは、不合格者に次の養成所を斡旋したりしないところです。
かと言って不合格者を放置するのではなく、不合格者だけを集めて今後の相談会を行うなどのフォローも行います。
卒業生の来塾も厭わない姿勢です。
在学中の厳しい態度とは異なり、朗らかな対応で迎えてもらえます。
他の養成所では、実質不合格であるにも関わらず、別の養成所の所属として合格などと謳い、ずるずると養成所にお金を払わせ続けるシステムを取るところが多いです。
青二塾入塾時に、青二塾で駄目だったらどこに行っても駄目、と言われた通りになります。
不合格でも諦めきれず、自ら他の養成所へ行ったりする等、あがく生徒もいますが、全員と言っていいほどプロの声優にはなれていません。
ひっそりと地方の小さな舞台に上がっていたり、イベントスタッフになっていたり、自らが最初に思い描いていた未来とは違う現状に無理やり納得して満足している状態です。
合格者のその後
青二塾の2年生約60人中、10人ほどが合格します。
合格者の人数は決まっておらず、極端に多い年もあれば、極端に少ない年もあります。
合格すると青二プロダクションのジュニア所属となりますが、ここからが更に厳しい戦いです。
声優タレントとして役に立たないと判断されれば容赦なく解約です。
合格者10人のうち2人残れば素晴らしい方で、大体1人、全滅の年も珍しくありません。
近年はアニメよりもナレーション等に強いようで、生き残った若手はそういった仕事を中心にプロの声優として羽ばたいていきます。
まとめ
以上のことから青二塾は、アイドル化した声優に疑問を抱く人、真面目に演技を基礎から学びたい人におすすめです。
他の声優の専門学校とは違い、残念な結果でも生徒のその後の人生を想うが故に、1年あるいは2年で声優としての道をすっぱりと切り捨ててくれるところが魅力です。
声優を目指したいが、駄目だった時にはきちんと就職して人生を立て直したいという考え方の方は、入塾を検討してみてはいかがでしょうか。