液晶モニタの選び方 ~液晶パネルの種類とその特徴~
液晶モニタを選ぶとき、ゲーム用や画像処理用など、用途によってモニタの種類を選ぶことが有ります。
一体どのような判断基準を用いて機種選択をしているのでしょうか。
自分に合った液晶モニタを選ぶためには、液晶モニタの仕組みとタイプを理解する事が重要です。
少し難しくなるかも知れませんが、液晶モニタの構造や仕組みについてご紹介したいと思います。
液晶とは
液晶モニタとは
これまでに実用化された画像を表示する装置、いわゆる『モニタ』には、液晶の他にもブラウン管、プラズマ、有機EL方式がありました。
ブラウン管、プラズマ方式はほぼ淘汰され、現在は液晶方式が圧倒的なシェアを持っていますが、将来的には有機EL方式にシフトしそうな状況にあります。
液晶方式は製造が比較的簡単で、大型化、細密化に有利であったため、10年ほどの間に瞬く間に普及しました。
また、画質面ではプラズマ方式の方が優れていましたが、小型化が難しく、消費電力も高かったため現在では市販されていません。
液晶とは
では液晶モニタの液晶とはどのようなものなのでしょうか。
液晶とは、文字通り、液体と結晶の両方の特徴を併せ持った物質のことです。
液晶モニタは液晶分子の結晶の部分が光を遮る(正確には偏光する)特性と、液体の部分によって結晶の部分の方向をフレキシブルに変える事が出来る特性をうまく利用しています。
液晶モニタの構造
液晶モニタの構造は大きく分けて4層からなっています。
裏側から順に、①光源、②偏光フィルタ、③液晶、④カラーフィルタ、⑤偏光フィルタと並んでいます。
光源の役割
光源では、白色光を発光しています。
液晶モニタでは、この白色光にカラーフィルタで色を付ける事によって、カラー色を表現しています。
また、光源はLEDを用いますが、パネル直下に光源を配置したものと、パネルのサイドから導光板を用いて導いてきているものの2タイプがあります。
一次偏光フィルタ
1枚目の偏光フィルタでは、光源から出ている光の内、一定方向以外の光を遮光して光の波長の向きをそろえます。
光の波長は通常180°すべての方向の位相を持っていますが、微細なスリットを通す事によりスリットと平行な成分の光だけを選択しているのです。
液晶
液晶は、偏光フィルタに対して、一定の方向に並ぶように配置されています。
また、液晶は一定方向だけになった光の波長の向きをねじる事が出来ます。
電圧をかける事によって、どれくらいの角度ねじれるかが決まります。
液晶のタイプによって、電源オフ時に光をねじる状態になっているか、ねじらない状態になっているか、状態変化の速度、状態変化の方向等に特徴があり、液晶モニタの特徴を決定しています。
カラーフィルタ
カラーフィルタでは、光に色を着けます。
光は青、赤、緑の三原色の混ぜ合わせで、黒以外のすべての色を表現する事が出来ます。
カラーフィルタも青、赤、緑の3色が並んで一つの画素を構成しています。
2次偏光フィルタ
液晶は、電圧をかける事で光の波長のねじれる割合を決定できますが、液晶の状態が光の波長をねじらない様な配置になっている場合、1枚目の偏光フィルタを透過した光は、2枚目の偏光フィルタも透過する事が出来ます。
もし、青、赤、緑のすべての光を透過させるよう、液晶を配置すると透過した光が混ざり合い、私たちには白色として感知されます。
反対に、すべての色を透過させない様、光の波長を90°ねじる様に配置すると、モニタ上には光が届かず、私たちには黒色に見える事になります。
また、青、赤、緑のそれぞれの透過率を調整する事で色の混ざり具合を調整し、さまざまな色を表現する事が出来ます。
各色の透過率は256段階に調整する事が多く、三原色の透過率の組み合わせは16,777,216通り存在します。
液晶モニタの表示色が1,670万色と言われるのはこの事に由来します。
液晶のタイプ
液晶モニタの性能は液晶の性能に大きく依存しています。
現在液晶モニタに使用されている液晶にはIPS、VA、TNの3つの種類のものが3種類あり、それぞれに特徴があります。
TN
TN液晶では、電源をオフにしたときに、光がすべて透過するように液晶が配置されています。
液晶に電圧をかけると、液晶樹脂の並びが変わって光を遮断するようになり、最大電圧で光の透過量がゼロになります。
TN液晶の特徴として、電圧ゼロから最大にしたときの液晶の角度変化速度が速く、応答性が高い事が挙げられます。
また、液晶がモニタに対して垂直に立ち上がる様に配列が変わるため、液晶を見る向きによって光の透過率が変わってしまうと言う問題が有ります。
液晶を見る向きによって光の透過率が変わると言う事は、モニタを正面から見る場合と斜めから見る場合で色が変わって見える事につながるため、TN液晶モニタは他の方式に比べて視野角が狭いと言う弱点が有りあります。
VA
VA液晶では、電源オフ時には液晶が垂直に立ち上がって光を遮断しています。
ここに電圧をかける事によって液晶樹脂が水平に移動して光を透過するようになり、色を発色する事が出来ます。
VA液晶も、液晶の位相変化が垂直方向に発生するため視野角が狭くなりやすい特徴がありますが、液晶の配置を工夫する事で改善されており、市販されている製品は、視野角が良好なものが多くあります。
応答速度についてもTNに準ずる速さとなっています。
また、電源オフ時に光を非透過とする構造上、光源の光を遮断しやすく、黒の発色が優れていると言う特徴があります。
IPS
IPS液晶では、液晶の位相変化が、モニタ面と水平に生じるという特徴があります。
この特徴により、視る角度による光の透過率の変化がほとんど発生しません。
よって、TN型、VA型と比較して非常に広い視野角を達成する事が出来ています。
ただし、液晶分子が垂直に移動するのに比べて抵抗が大きく応答速度に時間がかかってしまいます。
応答速度の低下は、ひとつのコマから次のコマへ画像表示がじんわりと切り替わる事を意味しますので、私たちが画像を見る際には、残像が残っている様に感じます。
液晶の弱点を克服する技術
液晶モニタの弱点は、応答速度の遅さとコントラスト比の低さです。
最近の製品の多くは、この二つの弱点を克服する技術を実装しています。
オーバードライブ
液晶モニタの応答速度は、液晶樹脂の物理的な移動に依存しているため、この移動速度以上の応答速度を得る事は出来ません。
また、応答速度が速いと謳われているTNやVAタイプでも、白⇒黒の様なmax値からmin値への速度は速いのですが、中間色から中間色への色変化は速度が遅くなります。
これらの中間色の応答速度の低下を補完するのがオーバードライブと呼ばれる技術です。
液晶を任意の角度に配置するためには、その角度に応じた一定の電圧をかける事が必要ですが、中間色を維持するための電圧は低い値となります。
液晶の移動速度は電圧に依存する為、低い電圧しかかけられない中間色では、応答速度も低くなります。
そこで、液晶を移動させる瞬間だけ電圧を高くかけて、発色時には電圧を規定値まで下げて維持する事で、液晶の移動測度を上げる技術がオーバードライブです。
この技術はIPS液晶にも搭載され、応答速度1ms、FPS144Hzを達成しているモニタが市販されており、高い応答速度を求められるゲーム用途などにはおすすめです。
ローカルディミング
液晶モニタでは、バックライトの白色光を液晶で遮る事によって黒を表現します。
しかしながら液晶で100%の光を遮る事は難しく、完全な黒を表現する事が困難です。
この問題を解決する技術が直下型バックライトとローカルディミングです。
これは、光源をモニタ直下に配置し、なおかつ領域ごとに輝度の切り替えが出来る様にした技術で、黒を発色したいエリアの光源をオフにすることによって、よりはっきりした黒を表現できます。
また黒以外の色に関しても輝度をコントロールする事で、全体的なコントラスト比の調整が出来る様になります。
まとめ
今回は、液晶モニタ選びのもっとも基礎となる液晶の種類と特徴についてご紹介しました。
液晶モニタ自体は、応答性の悪さや、光の遮蔽率の悪さが弱点として指摘され続けていましたが、近年では飛躍的に性能が上がっていますので、以前ほど用途を選ばない使用が可能となってきました。
しかしながら、自分の用途にこだわった道具選びを行いたい方は、応答速度のTN、色再現性のIPSなど、パネルの特徴を良く踏まえて、是非、自分に合ったモニタ選びを楽しんでください。