ペンタブレットのペンはなぜ電池なしで動く?歴史や仕組みをチェックしてみよう!
お絵描きをする人にとって身近な道具であるペンタブレットですが、その中身には非常に高度なテクノロジーが詰まっています。
身近すぎて当たり前になっていますが、そもそもペンに電源を供給する必要がないという点だけでも驚きのデバイスといえるでしょう。
私達が普段使うデジタルな道具はどれも電気を必要とするのにも関わらず、ペンタブレットのペンには電気が要らないように見えます。
今回はそんなペンタブレットの歴史や仕組みについて迫っていきましょう。
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ワイヤレスな給電方式
一般的に電気はコンセントや電池から供給するものであって、空中を移動する電波のようなものとは異なると思われているものです。
実際にスマートフォンにはケーブルを接続したり充電器を取り付けなければいけませんし、各種家電製品もコンセントが必要だったりします。
ですがペンタブレットは例外です。
何とペンには空中を伝って給電されているのです。
ペンタブレットはもちろん電源が必要で、これは通常パソコンに接続するUSBケーブルから供給されます。
そして電気が供給されているペンタブレットにペンが接触すると、ペンへと電気が伝わるのです。
ペンへ供給された電気はペン内の回路を巡り、ペンの機能を果たせるようにしてくれます。
簡単に説明するとこういった仕組みなのですが、このワイヤレスな給電方式はペンタブレットの歴史を変えたといえるでしょう。
そして同時にワコム社の事実上独占状態な市場を生み出すことにも繋がったのです。
ワコムの台頭
ペンタブレットの世界で第1位のシェアを長年誇り続けてきたワコムは1983年7月に誕生しました。
埼玉県に設立したワコムは製品開発を続ける傍ら、1988年にはドイツに連結子会社である現在のワコムヨーロッパを設立したり、1991年にはアメリカにも連結子会社のワコムテクノロジーを設立するなどの展開をみせています。
その後も海外進出には意欲的で、2000年には中国へワコムチャイナを設立し、以降は韓国やオーストラリア、シンガポールに台湾、インドへとそれぞれ連結子会社を設立してきた形です。
こうした海外展開を積極的にしてきたからか、ペンタブレットのシェアは国内に留まらず世界的なものとなっています。
ペンタブレットといえばワコムであり、実際に家電量販店でもワコム以外のペンタブレットを見る機会は少ないはずです。
ペンタブレット業界において絶対的な王者になったワコムの躍進はこれからも続いていくのかもしれません。
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ペンタブレットの歴史
ペンタブレットの歴史は1888年にアメリカの発明家イライシャ・グレイが特許を取ったところから始まったと言えるかもしれません。
彼は電気的なペン型デバイス「TELAUTOGRAPH」というものを発明し、その資料は現在でもみることができます。
コンピュータとはかけ離れた形状をした独立した機械なのですが非常に精巧に設計されているようです。
現在のペンタブレットに似たデバイスは既に1950年代に開発され、Tom Dimond氏による「Styalator」という製品のデモンストレーションが行われていたとのこと。
それから1960年代前半となると「RAND Tablet」なるデバイスが販売されるようになります。
この製品はRAND Corporationによる製品で、同社はアメリカ軍に情報を提供する企業でもありました。
また開発の際にはAdvanced Research Projects Agency(DARPA:アメリカ国防高等研究計画局)の協力もあったとのこと。
インターネットもそうですが、アメリカ及びアメリカ軍のIT技術への関心の高さはペンタブレットの歴史にも影響を与えていたようです。
それから1960年代にはノートパソコンのDynabookにペン型デバイスの採用を提案するも実現に到らなかったり、ブラウン管のモニタに直接描きこめるライトペンを採用したFairlight CMIというシンセサイザーが登場するといった動きがありました。
ワコムの開発したペンタブレットはワイヤレスだった
そして1984年、前年に設立されたばかりのワコムが電磁誘導方式のペンタブレットを販売するようになります。
これは先に述べたようなペンに電源を要さない形式のデバイスです。
一般的にペンタブレットといえば電源供給用のコードがペンについたデバイスが普通であった当時、これは革新的な出来事だったに違いありません。
ペンタブレット本体は未だパソコンに繋ぐ必要はありますが、ペンがコードレスになったことはとても利便性の高い状況を生み出してくれました。
その後もワコムは技術革新を続けデバイスの精度を高めることに研鑽し、ペンタブレット業界にとってなくてはならない企業へと成長することになります。
電磁誘導のおさらい
簡単にワコムのペンの仕組みについては既に触れましたが、より詳しく、具体的に確認しておきましょう。
まず現行製品ではなくかつてワコムに使われていた電磁誘導方式ですが、これは電気と磁界の性質を利用したものとなります。
例えば巻いたコイルと電球がついたものと、磁石があるとします。
このとき、磁石を巻いたコイルへと近づけると何と電球が点くのです。
なぜ点くのかというと、磁石の回りの磁場が変化するときに電気が発生するため。
この現象を電磁誘導と呼びます。
また、電流が流れているところには必ず磁場ができます。
ということは何かに電流を流してその磁場を変化させるようなものを近づければ電気の流れが伝わりそうです。
そんな現象を利用したものが電磁誘導方式のペンタブレットとなります。
ペンにはコイルが巻きついている
ペンタブレット本体は常に給電しています。
給電しているということは電気が通っているわけですから、常に表面には磁界が張り巡らされているということです。
そしてペンタブレットに欠かせないペンですが、こちらには何とコイルが巻きつけてあったりします。
一方に電気を伝え、一方にコイルを巻いたものが接近したとき、コイルを巻いたほうにも電流が伝わるという現象が発生し、このことをファラデーの法則といいます。
そしてペンタブレットとペンの関係は正にファラデーの法則にあるといえるでしょう。
電磁誘導によりペンへと給電された電気はペン内の回路を走りペンの位置を本体へと伝え、ペンタブレットは入力機器として機能しているわけです。
現在は電磁共鳴方式
現在のワコムのペンタブレットは電磁共鳴方式というものを採用しています。
こちらは音叉のように周波数の同じコイルをの間に電気が伝わるという性質を利用したもので、より作ることは複雑になりますがエネルギーの電装効率はより優秀です。
具体的にはまず本体が磁界を作り周波数を出し、ペンがそれを感知したら位置を本体へ返すといった具合になります。
ほぼ電磁誘導方式と変わりませんが、周波数を使ってやり取りをしている点が違いといえるでしょう。
1秒の間に何回も位置を検出している
電磁共鳴方式を採用した現在のペンタブレットはペンの位置の読み取りを凄まじく短い更新間隔で行っています。
本体は周波数を送る送信モードとペンからの周波数を受け取る受信モードの2つのモードが1秒の間に何回も切り替わっているのです。
一見したところ使っていないときは何もしていないように見えるペンタブレットですが、ペンの位置を検出するのに忙しいのでしょう。
このような高度なテクノロジーを備えたワコムのペンタブはお絵描きする方にとってもちろんおすすめのデバイスです。
まとめ
ペンタブレットの歴史や仕組みについてみてきました。
何気なく当たり前のように使っているデバイスですが、歴史は古くテクノロジーも複雑なものです。
そしてこれからもペンタブレットの歴史は続き、テクノロジーも発展していきます。
これからも技術が進化していけばペンタブレットも進化していくでしょう。
身近なデバイスであるペンタブレットがこれからどのような形になっていくのか楽しみなところです。