液タブと板タブ、それにタブレットPC 絵を描くのに最も適した環境を選びたい
液晶ペンタブレット(通称「液タブ」)の製品ラインナップが多様化してきたのは、ここ10~15年ほどのことです。
それより昔、液晶ペンタブレットといえば、プロの漫画家やイラストレーターのみが所有する、本格的で大変に高価な機材でした。
しかし今では市場の裾野が広まり、お絵描きの初心者向けとして販売されている製品さえ存在します。
それらの具体的な特徴と、他の製品との違いを見ていきましょう。
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液タブのメリット3点
そもそもペンタブレットは、絵を描く人向けの電子機器ですから、スマートフォンのように万人向けの道具ではありません。
しかしそれでも値段は下がり買いやすくなったのは、液晶技術の進展と、漫画・アニメ産業の活性化、あるいは絵を描く人の需要が増えたからとも言えるでしょう。
今では実際に、プロの漫画家やイラストレーター、あるいは写真家でなくても使う人が増えてきています。
いざ自分も導入したいと思ったとき、どんな人におすすめの製品なのか、知識を学んでおきましょう。
液タブは、スマホやタブレットPCと同じ感覚で使える
10年前であれば「画面を直接触って操作する」という発想が珍しいものでした。
駅の券売機や銀行ATMにタッチパネルが登場し始めた時代であり、まだ個人が所有するTVや携帯電話機の「画面を」指で触れる操作方法は馴染みが薄い次代でした。
その世代の人は、画面に触れる操作それ自体に違和感をおぼえることがあるかもしれませんね。
しかし今では、スマートフォンの普及が良い例であるように、指で画面を触れて操作する方法は、一般的なデバイスの特徴にさえなってきています。
タブレットPCも、スマートフォンの延長として普及したとも言える経緯があり、操作方法自体は今や珍しくもありません。
液晶タブレットは、スマホの延長として登場した機器ではありませんが、大きく考えれば「画面自体が操作パネルとなっている」という特徴は共通します。
「直接画面に触れて操作する」という特徴を備えたペンタブレットですから、スマホやタブレットPCでタッチパネル搭載の画面に慣れていれば、さほど違和感なく使い始められることでしょう。
液タブは、紙と同じくペン先に絵が表示される
液晶ペンタブレットが板型ペンタブレットと大きく異なる特徴としては、まず「ペン先に画面があって、そこに描画される」ことが挙げられます。
従来の板型タブレットは、手先で専用ペンを操作しますが、描かれた絵は目の前にあるPC画面に表示されることとなります。
操作者にとっては、「手元でない場所に絵が存在する」という一見奇妙な動きを体験することになるのです。
もちろん慣れれば問題はないのですが、今までペンタブレットを使ったことがないという人であれば、描画操作に慣れるまでの期間は液晶タブレットの方がずっと短いはずです。
液タブは、絵全体を見渡せる
PCではなく実際の紙に長い線を描く場合、目を紙から離して紙全体が見えるようなアングルで描くのが普通です。
しかし板型タブレットで絵を描く場合は、一部分だけを拡大して描くのが普通。
ですから、つい拡大しすぎてしまい、絵全体を見渡すのが難しいのです。
また、ペン先に線が実際に表示されるわけではないので、長い線を描く場合に、描きたい方向と実際に腕を動かすした方向がずれてしまうことも。
つまり、大きな絵の場合には、直感的に思うように線を描きにくいという人が多いようです。
液晶タブレットであれば、極端に大きな絵でもない限りは、絵全体を手元で見渡すことが可能。
大き目の絵や、絵の背景を描く場合におすすめです。
「線を描きたい方向」を見ながら「腕の動き」を調整できるので、本物の紙と同じように、全体を見ながら絵を描きやすくなっているのが特徴です。
液タブのデメリット
液晶ペンタブレットの購入をためらってしまう理由として、主に「値段が高い」「盤面の上に紙を敷けず、傷や汚れが付きやすい」「描き心地に違和感がある」といった声が聞かれます。
確かに板型タブレット(通称「板タブ」)に比べれば2倍~5倍くらいの値段です。
また、液晶を搭載している分だけ部品数が多く、発熱や故障をしやすいと言えるでしょう。
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板タブと何が違うか
ところで、液晶でない板型タブレットも、現役の製品として広く流通しています。
使っている人の数で言えばむしろ液タブよりも普及しているでしょう。
「安価だから」「液タブよりも先に普及した製品だから」という事情だけでなく、「両方を使い比べた結果として、板タブの方が便利だったから」という意見も聞きます。
単に上位互換ではないので、それぞれの特徴を見ていきます。
板タブは、価格が安い
最も標準的に売られている人気サイズのペンタブレットは、B5サイズです。
適度に大きく、置き場にも困らないサイズですね。
そして一般に、B5サイズの板型タブレットは2~5万円の価格帯。
一方で液晶タブレットの相場は10~30万円程度です。
もちろんそれなりの性能を備えているから高額なのであり、また初心者向けとして機能を絞った製品もあるようです。
板タブは、盤面の上に紙を敷ける
板型タブレットの上に紙を敷く人がいます。
これは、紙を敷くことによってペン先に適度な摩擦を発生させることにより「本物の紙に描いているような描き心地」を再現しているから。
ペンタブレットを導入する前に、アナログで絵を描いていた頃の感覚に慣れた人に向いている手段ですね。
ところが液晶ペンタブレットの場合、紙は敷けません。
ペン先の下に画面がありますので、紙を敷いてしまうともちろん画面が見えなくなります。
紙を敷けないと傷がつきやすかったり、また手首や腕の汗で画面が汚れやすくもなったりするでしょう。
板タブは、腕に絵が隠れない
板型ペンタブレットを操作すると「前方を見ながら手元を動かす」という一見奇妙な動きとなります。
実は、「絵が腕に隠れないで済む」という大きなメリットもあるのです。
右利きの人であれば、紙の左の方に絵を描くと絵全体が右腕に隠れるのが普通ですが、板タブなら隠れることはありません。
このメリットに慣れていると、板型から液晶タブレットに変更した際に使いづらさを感じてしまうかもしれません。
iPadは液晶ペンタブレットの代わりになるか
普段絵を描かないという場合でも、タブレットPCを普通に使う人は多いでしょう。
そして、タブレットPCに付属する描画ソフトを試しに使って、指で落書きをしてみたという人もいるようです。
中には、元々絵を描く人がタブレットPCの描画機能を使って、指先だけで本格的な絵を描く例もあるようです。
さて、iPadに代表されるようなタブレットPCは、液晶ペンタブレットの代わりとなり得るのでしょうか。
タブレットPCはそもそも指で操作する
そもそもタブレットPCは指でタップ・スワイプして操作するのが普通です。
一方で、絵を描く人はもちろんペンを使いますし、実際のペンや板型タブレットを使ってきた人がいきなり指で描くとなれば、環境に慣れるまで時間がかかりそうです。
もちろんタブレットPC用のタッチペンも、別売りで販売されていますが、細かい線を描くには不向きでしょう。
指でらくがきするような簡易なイラストを描くのならばまだ良いとして、本格的な描画にも耐えられる性能を、タブレットPCは備えているのでしょうか。
また、これまで絵を描いてきた方が、新しい道具としてiPadに移ることは簡単なのでしょうか。
タッチペンは描画できるほど高精度ではない
タブレットPCの多くにはタッチペンは付属していません。
タブレットPCは、スマートフォンと同じように、指で操作するのがデフォルトだからです。
確かに別売りでタッチペンは売られていますが、絵を描くほどの精密な機能は期待できないことでしょう。
だからタッチペンの機能はあまり期待できず、またタッチペンのゴム製のペン先を見れば分かるとおり、ペンタブレットのペンとは明らかに異なった作りです。
これでは絵を描くための精度や筆圧感知に当たって、不安ですね。
iPad ProとApple pencilの組み合わせが人気です
しかしそんな中、あえて「液晶ペンタブレットと同じような環境」をアピールする製品が発売されました。
「iPad Pro」と「Apple pencil」の組み合わせです。
なかなか評判が良いらしく、長く液晶ペンタブレットを使い慣れたプロのイラストレーターにすらおすすめされる、高い評価をしている製品です。
Apple pencilは、実際のペンのように先端がとがっている形状が特徴のタッチペン。
形状だけでなく、まるでペンタブレットに描く際のような、適度な抵抗がある描き心地を再現した製品だそうです。
「紙に鉛筆で線を描くときのような」感覚、あるいは「板タブレットで描くときのような」感覚が再現されています。
まとめ
ここまで大きく分けて「液タブと板タブ、どちらが良いか」「液タブとタブレットPC、どちらが良いか」という2つの疑問を考えてきました。
「慣れているなら板タブ、これから始めるなら液タブ」「本格的な描画を行うならばタブレットPCよりも液タブ」といった一定の結論を出せるかもしれません。
尤も、板タブと液タブそれぞれにメリット・デメリットが存在します。
どちらが良いか、慣れやこれまでの描画経験に大きく依存するので、自分に合った方法を探すのが一番。
また、液タブは、従来の板タブに比べて高性能ですが、単なる上位互換ではないことに注意してください。