液晶テレビはどのように発展してきたのか?液晶の歴史でおさえておきたいポイント7選
液晶テレビは、私達の家庭になくてはならない存在となっています。
しかし、そもそも液晶とは何なのか、製品化されるまでにどのような歴史があったのか、普及してからの技術的な発展はどのようなものか、といった事を知っている人は少ないのではないかと思います。
ここでは、そのような点の説明を中心にして、液晶テレビにまつわる歴史をご紹介します。
液晶の発見
液晶テレビが家庭に普及したのはこの15年ほどの間ですが、液晶の技術自体は古くから存在していました。
液晶テレビに利用される液晶の原型は、1888年にオーストリアの植物学者であるライニッツァ氏が発見したもので、今から100年以上前になります。
同氏が発見した物質は、液体と固体の中間的な性質を持ち、コレステロールの機能の研究をしている時に発見されたものです。
その後、この物質は、流れるように動くという性質や、液体(Liquid)と結晶(Crystal)の中間体という形態をとる事から、液晶という名前が付けられました。
家にあるテレビの画面は、液体でありながら結晶である物質に映像が映し出されている、という事が分かると、不思議な魅力があるような気がしますよね。
このように液晶は魅力的で不思議な性質を持っており、存在自体は古くから認識されていましたが、これを応用した技術はなかなか登場しませんでした。
液晶ディスプレイの発明
液晶を使用した技術が注目されるようになるのは、1960年になってからです。
1962年、アメリカの企業であるRCA社(Radio Corporation of America)は、液晶に電圧を加えて液晶分子を制御する手法を用いた液晶のディスプレイを開発し、特許の出願を行います。
1964年には同社で液晶についてさらなる研究が進み、1968年には液晶時計の試作品が発表されました。
これにより、液晶ディスプレイの存在は幅広く知られるようになり、様々な人が研究するようになります。
日本でRCA社の発表に注目し、液晶技術に興味を抱いたのがシャープや東北大学などの人々でした。
東北大学でこの研究を担当したのが、後に液晶技術の発展に大きく貢献する内田達男氏です。
当時、大学院生だった内田氏は、液晶技術の研究を進めていく上で、電子工学以外にも様々な知識が必要である事に思い至り、物理や化学といった専門領域を超えた学問を学びつつ研究を行っていきます。
液晶ディスプレイの様々な製品への応用
研究を続ける内田氏の元には、大手電機メーカーなどから様々な人が来訪しました。
特にシャープは液晶ディスプレイの開発に力を入れており、積極的に内田氏の元を訪れます。
シャープは、その後、1973年には電卓、1981年にはワープロへと、液晶ディスプレイの技術を応用していきます。
その後も研究を継続し、次々と液晶技術を駆使した製品を開発、1987年には3インチの液晶カラーテレビを発売します。
1998年にはエネルギー効率に優れたディスプレイを開発し、これは任天堂のゲームボーイなどにも採用されます。
この技術の開発により、内田氏とシャープは、2005年の産学官連携功労者表彰文部科学大臣賞を受賞する事になりました。
液晶ディスプレイを使用した製品
液晶ディスプレイを使用した変わった製品としては、1982年にエプソンが開発した世界で初めて液晶ディスプレイを搭載したテレビ付きデジタル時計があります。
これは白黒のテレビでしたが、当時としては世界最小、最軽量のテレビで、サイズは1.2インチと小さいながら、単三乾電池2本で連続5時間の視聴が可能でした。
その後、1984年には、エプソンが液晶のポケットカラーテレビを発売します。
当時としては珍しいとても小さなテレビで、画面のサイズは2インチ、解像度は240×240画素という製品でした。
1987年にはシャープも同様の液晶カラーテレビを発売、こちらは画面のサイズが3インチでした。
しかし、小さな画面では家族で映像を楽しむ事が難しく、その後は、画面の大型化が進んでいく事になります。
そして、1995年にはシャープが10.4インチの液晶テレビを一般家庭向けに販売、2001年には同社から液晶テレビAQUOSが発売され、その頃から一般家庭に液晶テレビが普及していく事になりました。
液晶テレビの普及
この液晶テレビも、初めのうちはほとんど普及しませんでした。
2001年にシャープからAQUOSが発売された他にも、2002年には東芝から20インチの液晶テレビが17万円ほどで発売されました。
価格的に全く手が出ないという訳ではなかったのですが、2002年当時、世界全体のテレビ生産における液晶テレビのシェアは1%しかありませんでした。
しかし、そのシェアも2005年には全テレビの10%まで上昇します。
その後、2006年には22%へと上昇し、2009年には69%を占めるまでになり、ブラウン管テレビとシェアが逆転します。
その後、2011年には84%となり、ブラウン管テレビの製造は、全体の9%まで落ち込みました。
日本では、2011年に地デジへの移行があり、それが液晶テレビのシェアを押し上げた理由のひとつだと考えられます。
液晶テレビの普及という流れは世界的にも同様であり、2012年はプラズマテレビのシェアが6%、液晶テレビのシェアが94%となり、2013年には世界で生産されるテレビの96%が液晶テレビというまでにシェアが広がりました。
(注)このようなシェアの変化も、液晶テレビの歴史の一端を表しています。
(注)出典:株式会社富士キメラ総研「2000、2003、2007、2012、2014ワールドワイドエレクトロニクス市場総調査」
液晶テレビの価格から見る発展
液晶ディスプレイも、初めのうちは値段が高かったのですが、時間の流れと共に技術、生産手法が成熟し、値段も下がってきました。
その流れを技術発展の歴史として捉えてみると、液晶ディスプレイの技術が発達していく過程を知る事ができます。
50インチ前後の液晶テレビの価格変化
例えば、大きさ約50インチのSONYのBRAVIAシリーズを値段の変化と共に見ていくと、おおよそ以下のようになっています。
●50インチ前後のフルHD液晶テレビ
- 2008年 55インチ フルHD 50万円
- 2009年 52インチ フルHD 45万円
- 2010年 55インチ フルHD 41万円
- 2011年 55インチ フルHD 38万円
- 2012年 55インチ フルHD 30万円
- 2014年 50インチ フルHD 16万6000円
- 2016年 48インチ フルHD 12万3000円
- 2017年 43インチ フルHD 9万3000円 2018年3月13日現在 5万5900円
●50インチ前後の4K液晶テレビ
- 2013年 55インチ 4K 42万円
- 2014年 49インチ 4K 45万円
- 2015年 49インチ 4K 30万円
- 2016年 49インチ 4K 18万1700円
- 2017年 49インチ 4K 24万5000円
- 2018年3月13日現在 12万5900円
モデルごとに搭載している機能が異なるので、単純に比較する事は出来ないのですが、おおよその流れとして、フルHDも4Kも低価格化が進んでいることが分かります。
上述の2008年と2017年の液晶テレビの値段を比較すると、約5分の1まで安くなっており、技術の進展をうかがう事ができます。
4Kテレビも2018年の最新の価格だと、2013年当時の3分の1ほどまで下がっている事になり、技術が着実に発展している事が分かります。
液晶テレビの時系列的な価格変化
液晶テレビ全体の平均価格を見ても、低価格化は進んでいます。
少し古いデータですが、以下の項目を見れば、2013年までの約10年間で液晶テレビの値段が大幅に下がった事が分かります。
- 2004 14.1万円
- 2006 13万円
- 2008 11.6万円
- 2009 8.9万円
- 2010 7.2万円
- 2011 5.2万円 ※2011年 地デジ完全移行
- 2012 5.1万円
- 2013 5.3万円
出典:総務省「ICT産業のグローバル戦略に係る成功要因及び今後の方向性に関する調査研究」(平成26年)2000年代前半に普及し始めた液晶テレビですが、その普及の歴史は浅く15年ほどしかありません。
しかし、開発技術や生産技術の発展に伴い、その価格は低価格化が進んでおり、多くの人が気軽に購入出来るようになりました。
2013年以降は、価格に大きな変化が見られなくなり、多少安くはなりましたが、おおよそ同じような値段で推移しています。
しかし、製品の中にはかなり安い物もあり、最近では16インチで1万円ほどで購入できる液晶テレビもあります。
性能が低くても、とにかく安い液晶テレビが欲しいという人には、このようなテレビもおすすめです。
このようにして液晶テレビ全体のラインナップを見れば、低価格化は留まるところを知らないという事が分かります。
液晶テレビが今後どのような歴史をたどるのかは分からないのですが、普及が始まってから15年ほどで、大きな進展を遂げた事は間違いないといえるでしょう。
まとめ
このように液晶テレビの歴史を見てみると、その技術の発展には、長い年月がかかってきたことが分かります。
1960年代に液晶ディスプレイが発表されてから、1980年代の液晶テレビの登場、2000年代後半からの一般家庭への普及、最近の4K、薄型化など、今では液晶テレビは私達の家庭になくてはならない存在となっています。
普段何気なく使用している液晶テレビの技術と発展には、多くの人が関わってきました。
液晶テレビの歴史を知り、そこに搭載されている技術を尊重しつつ、大切に使っていきたいですね。