デジタルで漫画を描きたい皆さんへ…液晶ペンタブレットのススメとデジタル作画の考察
同人誌・商業誌問わず、「漫画をデジタルで作画する」動きが加速しつつあります。
特に前者、同人誌にいたっては、今日ほとんどの作家がデジタル作画をしているのではないかと言われるほどです。
今回は漫画に特化して、デジタル作画をするプロが液晶ペンタブレットを選ぶ理由や、デジタル作画そのものの考察にいたるまで、漫画作りと液タブについて考えてみたいと思います。
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漫画家が液タブを好む理由
近年、商業誌やWeb上で連載作品を持つプロの漫画家の間に、作業のデジタル化現象が急激に広がっています。
ベタやトーン・パースからの背景処理など、従来はアシスタントに任せていた作業が短時間で済むようになり、入稿できる状態までの原稿を作家自身で行うことが出来るようになったのが、大きな理由です。
プロ歴の長い漫画家は、依然「線画までアナログ・仕上げをデジタル」で行うスタイルが多いようですが、なかには、ネーム前の初期段階から全てデジタルで行う先生も何名か出てきました。
それというのも、完全デジタル移行には様々なメリットがあるからです。
●作品の工程をクラウド化して、共有したり外出先で確認することが出来る
●作業場そのものを縮小することができる
●制作時間の圧縮をすることで、作品の多産化が実現できる
これを踏まえた上で、なぜプロがこぞって液タブを選ぶのかということを考えてみます。
液タブという可能性
前述した「作品の全行程をデジタルで行う」先生のほとんどが、液晶ペンタブレットを使用しているようです。
前提条件として、
●漫画の制作工程がルーチン化している
●パースや人体デッサンなど、絵の基礎力がある
これらが必要ですが、裏を返せば、腕に覚えがあればすぐに液タブで完全デジタル移行…というのも、早くはありません。
しかしここで出てくるのが、初期投資の問題。
「代用品として従来の板状ペンタブレットでもいいのでは」という疑問も当然、持ち上がることでしょう。
国内で独壇場を築いているワコムの液タブは、一番安いモデルでも10万円以上。
確かに、気軽に購入できるとは言えない価格です。
それでも商業作家たちがこぞって液タブを購入する理由。
それはずばり「板タブレットよりもはるかに直感的に操作できる」からです。
実際の口コミや体験談などの傾向を、ここで取り上げてみます。
従来型の「板タブ」を購入してみたものの、ペイントツールの操作以前に「描く」ことに慣れきれず挫折してしまった…。
そんな声も少なくありません。
その点、液晶ペンタブレットであれば、直接ペンを置いたところに絵が出来るので、慣れやすさが段違いに異なります。
アナログからデジタルへと工程を移すにあたって、ペイントツールの理解も必要となることでしょう。
そのうえで、描くことそのものへの慣れやすさ・直感的であることなどは、非常に重要なメリットになります。
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デジタル化に合う画風
さて、お話を少し戻して、「完全デジタル化に合う画風」というものを考えてみましょう。
昨今のペンタブレット・ペイントツールの性能は凄まじく、均一でなめらか・かつ強弱のくっきりとした線をいとも簡単に引けるようになっています。
背景処理に至っては、パース処理をボタン一つで行ったり、ペンを動かすだけで自動的に背景を作画できる素材配布まであります。
トーンやベタ等の仕上げの美しさも、言わずもがな。
しかし、それゆえに「漫画の個性がなくなってきた・デジタル工程で済ませている漫画はすぐにわかってしまう」という読み手の声もあります。
ペンタブレットというツールを通して完全デジタル化に走る気流の中で、敢えてアナログ環境を守り続ける作家もいますが、そういった「自作品の没個性化」を危惧しているというインタビュー記事も見かけました。
デジタル描画ツールへの投資をしたあとに考えるべきなのは、「どの作業をツールでこなし、どの作業をアナログと同方法でやるのか」の切り分けです。
具体的に述べると、カラー原稿に関してはアナログ原稿とほぼ見分けがつかないレベルでの作画が可能になっています。
しかし、モノクロの原稿については、ペイントツールの機能に頼りすぎることで作品が「没個性化」してしまう可能性が否めません。
プロがよく採用する手法としては、
●ペンタブレットの利点である「筆圧感知」やペイントツールの「線の自動補正」機能を切り捨てる。
…均一で繊細な線を重ねて、ペン画のように描く
●ペイントツールにある「線の自動補正機能」のみを捨てて、処理のほとんどをフリーハンドで行う。
…ペンタブレットそのものの機能に完全に依存する
こういったものがあるようです。
動画サイトなどに、実際に活躍しているプロの作業現場や工程を映した動画がいくつもあるので、参考にするとよいでしょう。
iPad Proの可能性
液晶タブレットのお話へ再び戻ります。
今、イラストレーター・漫画家から注目が集まっているのが、「iPad Pro」。
オプションとしてAppleから発売されている"Apple Pencil"と組み合わせることで、タブレット端末をタッチペンで操作する…ということ以上のものが、かんたんに叶ってしまうのです。
画面サイズも、ワコムの最も小さい液晶タブレットとさほど変わりがありません。
最大筆圧感知精度・傾き検知等のスペック情報は公開されていないため、筆者の体験や口コミからその素晴らしさをお伝えします。
アナログに限りなく近い描き心地
まず驚くのが、「ペンを動かしたときに、しっかりと線がついてくる」ことです。
液晶ペンタブレット製品のほとんどが、描画した線が微妙に遅れて入力される現象を完全に解消できていないのに対し、IPad Proではほとんどその現象が起きません。
また、描画している面に対してペン先が接地していない・ペン先が浮いて見える…つまり「視差」と呼ばれる現象も、IPad Proではほとんど感じることがありません。
初期からインストールされている「メモ帳」アプリを使用すると、その驚異的な実力をよく知ることができます。
本題の漫画製作ですが、多くの作家に愛用されている"CLIP STUDIO"のiOS版はないものの、人気2番手と言える"MediBang Paint Pro"というフリーアプリを使用することができます(一部有料)。
このアプリでも、前述した機能の高さは変わらず、快適に描画することができます。
次世代の漫画製作にはおすすめのツールと言えるでしょう。
ワコムの牙城を破る格安液タブ
最後になりますが、ワコム製品だと予算がつかない…というアーティストの皆さん向けに、人気の格安液タブのご紹介をさせていただきます。
HUION 21.5インチ GT-220
台湾メーカー製の液晶タブレットで、ワコム製品に次ぐ人気を誇る格安モデルです。
説明書やドライバーが英語なので、はじめは抵抗感を覚える人が多いようですが、メーカーのサポートが懇切丁寧という口コミが多数あります。
液タブとしての性能は、公開されているスペック・使用感ともにワコムとほぼ変わらないとのこと。
描画時にペン先が沈み込むのが特徴で、慣れには個人差があるようですが、アナログでつけペンを使用していた人であればすぐに馴染むとの声もあります。
XP – Pen 21.5
こちらもアジア製の液タブです。
解像度が美しく、上記の製品よりも色の再現度が高いのが最大の特徴です。
ただし、一部「ペイントソフトによって描画遅延が出る」との報告もあるため、ご自身が使う予定のペイントソフトを確認した上での購入をおすすめします。
こちらもペン先は沈み込むタイプなので、アナログ慣れしているかたであればすぐに使いこなすことができるようです。
まとめ
あるロングベストセラー作品を持つプロ作家の言によると、「デジタル作画に移行した場合、アナログに戻ることはできない」とのことです。
メリット・デメリット両面ありますが、コミックイラストの世界全体がデジタル化へと邁進していることは否めません。
作画ツールでお悩みのかた、まだ漫画は描き始めたばかりというかたも、これを機にペンタブレットの購入を含めた「デジタル作画」への道もご一考してみてはいかがでしょうか。